老子の言葉をわかりやすくお届けします

『老子』には経営の知恵がいっぱい!

老子思想=「アウトローな思想」
…そんなイメージをお持ちの方も多いことでしょう。
しかし、意外かもしれませんが、『老子』の中には、
経営に生かせるエッセンスが非常に多く含まれているんです。

 

これに注目して、アメリカの経営者の間では、
リーダーシップの教科書として『老子』が人気になっているのだとか。
日本でも、経営者向けの啓発本の中で
老子思想について触れられている例は少なくありません。

 

経営者=リーダーの理想的な在り方については
様々な考え方がありますが、
老子の言う「理想のリーダー(為政者や経営者)」は、
周りから尊敬される人でもなく、愛される人でもなく、
当然、バカにされるような人でもなく…。
ただ、「ああ、そんな人もいたね」と意識される程度の人。
まるで空気のように「そこに在る」。これが理想なのだと言います。

 

「えっ、なんで尊敬される上司っじゃダメなの?
ちょっと、ひねくれ過ぎていてよくわからない」

 

と、イマイチ納得できないという方も多いかもしれませんが…。

無為=なにもしないことではない

老子の言う、「空気のようなリーダー(経営者)」とは、
決して、なにもしない人ではありません。
老子と言うと、「無為自然」という思想がメジャーですが、
この「無為」=なにもしないということではないのです。

 

まずは、会社組織を例に考えてみましょう。

 

「あの人はスゴイ上司だ!」
「なにもかもが完璧な上司だ」
「スゴイ経歴を持った人らしい」

 

…このようなリーダーの元で働くのは、ちょっとやりにくいと思いませんか?
「自分が失敗して脚を引っ張っちゃったらどうしよう」
「こんなことも満足にできないのか、って、あきれられるのでは…」
と、あれこれ余計な心配がついて回って、
思い切り仕事をするのが難しくなってしまいます。
だから、「周りから尊敬される立派な人」は、
組織のリーダーとしては一段劣るというわけです。

 

これが、「ああ、いるね」と存在を意識される程度の上司なら、
部下は余計なことを恐れず自分の力を発揮できますよね。
これこそが、リーダーの最も大事な仕事。
余計な手助け、作為的な指導は何もせず、部下の力を100%出し切る。
これができることが、経営者としての大事な資質なのです。

 

「自分は後ろに退いていっこうにリーダーぶらない」
これが、老子の教えです。

自分のことは二の次で。

私利私欲に走らない、というのは当然のことですが、
同時に、「自分のことは二の次にできる」というのも
リーダーたる「経営者」に必要不可欠な資質です。

 

老子によれば、人々が自分の命を賭してまで抵抗するのは、
リーダーたちが私腹を肥やしているのに
自分たちの生活は一方にラクにならないからです。
自分のことを優先する経営者では、部下はついてきてくれないでしょう。

 

そうは言っても、経営者もまた人間。
誰より自分が大事なのは当たり前のことです。
だからこそ、「自分のことを二の次にできる」という資質、
いわば「才能」が必要と言えます。

 

また、これからは「エコ」の時代。
今まで以上に、「自然と文明の共生」が叫ばれる時代になるでしょう。
高級品よりも、自然界の循環に還りやすいものがウケる時代です。
言ってみれば、社会全体が、「自然に還る」ことに目を向け始めているわけです。
(ただ、今の段階では単なる「ポーズ」と言わざるを得ない部分も多く、
老子思想の本質とはズレているのですが…)

 

経営者としては、こうした時代の価値観の移り変わりを柔軟に受け止め、
その波に乗り遅れない“センス”も必要不可欠と言えます。