本当の強さって何?
老子の思想で特徴的なのは、
世の中一般で言われている“強さ”を本当の強さとは考えないということ。
すなわち、一般的には“弱い”とみなされるものの中にこそ
真の強さがあると考えるわけです。
例えば、「柔らかくて弱いもの」と、「固くて強いもの」。
普通に考えると、後者のほうが強いように思われますよね。
(実際、“強い”という言葉が入っていますし…)
しかし、水は柔弱ですが、時間をかければ固い岩を穿つことができます。
強い北風が吹けば旅人はコートのボタンも心も閉じてしまいますが、
やわらかい日光は旅人を開放的にさせてくれます。
力で抑え込もうとしても人々はますます依怙地になって心を開きませんが、
言葉に耳を傾けてもらえれば人は安心して心を開き、信頼を寄せます。
このような例え話から転じて、
「本当の強さとは、剛強ではなく柔弱なものである」と言えるのです。
老子は、繰り返し、「柔弱なものが固くて強いものに勝つ」と言っていたそうです。
最強の“武器”とは?
「柔弱勝剛強」
(柔弱は剛強に勝つ)
柔らかくて弱いものは、頑丈で強い物に勝つことができる。
これは、老子が繰り返し説いていた教えです。
しかし、これに加えて老子は、こうも言っています。
「これを実行できる者はいない」と。
なぜなら、柔弱なものが剛強なものに勝つためには、
その柔軟な発想力を生かすことが必要だからです。
要するに、正面から戦えば剛強なものに勝てっこないので、
その分、知恵で勝負しなければいけないよ、ということですね。
ただふにゃふにゃっとしているだけでは、本当の“強さ”は発揮できないというわけ!
結構、厳しいですね(笑)。
老子によれば、柔弱なものの強みであるしなやかな“発想力”を生かすには
「道」=万物の根源についてよく知り、物事をありのままに捉え
常に自然体で向き合えることが必要なのだとか。
柔弱なものが持つ“しなやかさ”は、ある意味では最強の武器ですが、
それを生かし切れていない人のほうが多いんだよ、という
老子からの皮肉とも取れる言葉ですね。
弱者に勇気を与える老子の言葉
世間一般では“弱者”とカテゴライズされる人々には、
「柔軟な発想力」という最強の武器があります。
…にも関わらず、それを生かし切れていない!
だから、剛強なものに勝てない。いつまでも「弱者」と言われっぱなしなんだよ…
…このような老子の言葉には、弱者への“愛”が感じられます。
世間のつまらない常識や価値観を元に「弱者」にされていても、
本当はそんなことはないんだよ。
弱い立場に身を置いていたほうが、世の中を隅々まで知ることができるし、
人々も警戒心なく心を開いてくれる。
「弱い」ハズの赤ん坊にだって、
そこに存在しているだけで周りの人間を動かすパワーがあるじゃないか!
実は、弱者こそが最強の存在なんだよ。
…もしも現代に老子が生きていれば、そんな風に教え諭して、
生きることに挫折した人を勇気づけたのではないでしょうか。
「どうして自分だけがこんな目に…」と悲観的な考えに支配された時は、
ぜひ『老子』を紐解いてみてください。
自分の人生を肯定するためのヒントが、きっと見つかるハズです。
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