老子の言葉をわかりやすくお届けします

世界は「陰」と「陽」で形成されている?

二つのものを比較する時、「陰」と「陽」という言葉がよく使われますよね。
字面から受け取る印象は、
陰=暗い、日陰、冷たい、湿っぽい
陽=明るい、太陽、温かい、カラッと乾いている
…といったところではないでしょうか。

 

そのイメージは、ほぼ正解。
「この世のあらゆる事象は、「陰」と「陽」の相反する二つの性質を持ち、
両者の調和によって世界が保たれている」
…これを、「陰陽思想」と言います。

 

わかりやすい例を挙げると…

 

【陰】女、夜、裏、地、柔、弱、退、逆、静、暗、凹
【陽】男、昼、表、天、剛、強、進、順、動、明、凸

 

老子もまた、この陰陽思想に影響を受けた一人。
例えば、「柔弱」と「剛強」、「無」と「有」について触れている言葉などは
明らかに「陰陽」を意識したものと言えるでしょう。
(例:「柔弱は剛強に勝つ」、「有の以て利を為すは、無の以て有を為せばなり」)

意識的にバランスを取れ!

陰陽思想のエッセンスも見て取れる老子の思想。
特徴的なのは、「意識的に陰陽のバランスをとれ」と教えていたことです。

 

「万物負陰而抱陽、沖気以為和」
(万物は陰を負いて陽を抱き、沖気以て和を為す)

 

全てのものは陰と陽を背中合わせに抱えており、
二つを中和させる“気”によって調和を保っている。

 

…この言葉をひねって解釈すると、
「中和させる気」がなければ、陰陽は調和を保てない」ということにもなりますよね。

 

そこが、「逆説の王」老子!
物事は、陰が強くなると陽が弱くなり、陽が強くなると陰が弱くなる。
このバランスが取れているからこそ調和が保たれているのであるから、
「バランスが悪いな」と思ったら調和させなければいけないんだよ、
という教えとも解釈できるわけです。

実際、家庭でも職場でも、男女の力関係のバランスが取れていると
家庭生活も仕事もスムーズに進みますよね。
住まいでも、日当たりが良い部屋も必要ですが
真夏の暑さの中では涼を取れる日陰の部屋も必要です。

 

上記に挙げたのは、日常生活の中のごく一例ですが…。
全てにおいて、このような「陰陽のバランス」が大事だと、
老子は考えていたようですね。

陰陽思想は「したたかな生き方」にも通ずる?

物事には「陰」と「陽」の二つの面がある。
どちらかが強すぎると調和が崩れてしまうのだから、
たくみに「バランス」を取りながら生きていきなさいよ、
というのが老子の教えです。

 

これは、

 

「奪いたいなら、まずは与えなさい」
「前へ出たいなら、まずは後ろへ退きなさい」
「伸ばしたいなら、まずは縮めなさい」

 

という「逆手を取る」戦術にもつながる教え。
老子お得意の「したたかな生き方のススメ」のベースには、
陰陽思想があった…とも考えられますね(笑)。

 

物事の一面のみに固執するのではなく、
二面性を受け入れてその両面を大切に、バランスの取れた生き方をする。
これは「状況に応じて柔軟に対処せよ」という教えとも取れます。

 

「したたかに生きる」というと、ちょっと聞こえは悪いですが…、
社会的な立場が弱い人こそ、頭をフルに使って、
上手に“バランス”を取りながら生きていくことが必要なのではないでしょうか。