善人は損をする?
学校でも職場でも、掃除を率先して真面目にやる人もいれば
手抜きをしたりサボったりする人もいますよね。
家庭でのゴミ出しも、真面目に分別して出す人もいれば、
「面倒だから」と色んな物をゴチャ混ぜで出す人もいます。
真面目にやっている人から見れば、
「自分はちゃんとやっているのに…。ちゃんとやらない人はズルい」
と思えるかもしれません。
こんな状況は不平等だ!と、憤りを感じる方も…。
いずれも、言い換えれば「道徳(良心)」の問題。
一見、良心に従って行動した人は損をしているように見えるかもしれませんが、
決してそうではありません。
良心に従って行動する人間と、良心に従わない人間。
老子によれば、「天はしっかりと見ています」
いますぐには両者の人生にはなんら違いが表れないかもしれませんが、
長い目で見れば、必ずプラマイゼロになるようにできているもの。
良心に従わない生き方をしていると、そのツケは必ずやどこかで現れるものです。
老子は、「道徳(良心)に従って正しく求める物は与えられる」
という意味の言葉を残しています。
これを逆に解釈すれば、
「良心に従った生き方をしていないと、何も与えられない」ということですよね?
善人も悪人も平等なの?
「道者萬物之奧。善人之寳、不善人之所保。
美言可以市、尊行可以加人。人之不善、何棄之有。
故立天子、置三公、雖有拱璧以先駟馬、不如坐進此道。
古之所以貴此道者何。不曰求以得、有罪以免耶。故爲天下貴。」
(道は万物の奥。
善人のたから、不善人の保んぜらるる所なり。
美言は以て市るべく、尊行は以て人に加ふべし。
人の不善なる者、何の棄つること之有らん。
故に天子を立て三公を置くに、
拱璧の以て駟馬に先つ有りと雖も、
坐して此の道を進むるに如かず。
古の此の道を貴ぶ所以の者は何ぞ。
以て求むれば得、
罪有るも以て免ると曰はずや。
故に天下の貴と為る。)
道とは万物の奥義である。
善人が大切にする宝であり、悪人が生活出来るのも道が存在するおかげ。
綺麗事を言って尊敬を得る者もいれば、
良い行動をわざと見せることによって人々に影響を与える者もいる。
ある人間が悪人だからと言って、どうして見捨てることが出来ようか。
だから、天子が即位したり、三大臣(行政・軍事・司法)を任命する際、
宝物を満載した四頭立ての馬車を献上することがあるが、(そんな事をするよりも)
低くひざまずいて「道」を守るように進言したほうが良いのだ。
大昔の人々が道を大切に守った理由はなぜか?
それは道に従って正しく求める物は与えられ、
もし自分に罪があったとしても、
徳に従って生きれば許されると昔から言われているからだ。
だから道は、この世で最も貴いものなのである。
…ここで言う「道」とは、「道徳」=人間の良心と考えるとわかりやすいでしょう。
(「万物の根源」と考えるとちょとわかりにくいので…)
要するに、この世は道徳(人間の良心)によって生かされていて
善人であろうが悪人であろうが、それは変わらないということなんです。
これだけ聞くと、良心に従った生き方をしている「善人」は
損をすることになるのでは!?と思われるかもしれませんが…
自分の良心に照らして見よ
人間の良心に関するところでいうと、老子はまた、
次のような言葉も残しています。
「天道無親、常與善人」
(天道は親なし、常に善人に与す)
これは、天界のやり方は完全に公平であって、
だからこそ天は常に善人にえこひいきをする…という意味。
つまり、最終的には良心に従った生き方をしている「善人」の
味方をするものだから、誰かが見ていようがいまいが
良心に従った行動をすることが大事なんだよ、という教えです。
二つの言葉を総合して解釈すると、
道徳(良心)に従った生き方をしていれば、天は必ず見ていてくれる!
だから、「マズイ!」と思うことがあるなら悔い改めて、
自身の良心に従って生きるのがよろしい。
…そんな意味でしょうか。
誰でも、良心がグラつくことあるでしょうし、
「人生の最初から最後まで100%善人!」でいられる人は稀でしょう。
言ってみれば、常に自分の良心との勝負を続けていかなければいけないということ。
ともすれば人は、他人の行いにばかり気を取られてしまいがちなもの。
ですが、本当に厳しく見つめるべきは、自分の良心なのです。
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