水こそ理想の生き方!
いつでも蛇口をひねれば水が出てくる。
そんな便利な環境に慣れている私たち日本人にとっては、
水はいつでもあるのが当たり前。
まじまじと、その動きに注目して見る機会も少ないのではないでしょうか?
しかし、赤ちゃんに水を見せると、非常に強い興味を示します。
実体があるようでいて、手にはつかめない。
そんな水の流れを見て首をかしげ、手を伸ばしてその感触に驚き…。
確かに、改めて考えてみると“水”とは不思議な物体ですよね。
老子は、この“水”に理想の生き方を見出していました。
水は、柔らかくしなやかでありながら、
一方では硬いものを穿つ強さも持ち合わせていますよね。
しかも、万物に恵みを与え、争うということなく低いところに留まろうとします。
(水は高い所から低い所に向かって流れますよね)
そんなしなやかさと粘り強さこそ、“究極の理想”だと言うのです。
“最上の善”とは?
「上善如水」
(上善は水の如し)
老子は、現代でも語り継がれる様々な名言を残した人物として知られていますが、
最も馴染みのある言葉が、この「上善如水」ではないでしょうか。
もっとも、お酒の銘柄としても使われていますので、
「飲み屋でよく耳にする」という方も多いかもしれませんが(笑)。
この「上善如水」という言葉通り、老子は、
“水”に「最上の善」というものを見出していました。
最上の善とは、争いを避けて生きること。
…というのも、老子が生きた時代(紀元前6世紀〜紀元前4世紀)の中国は
国同士の争いが絶えず、争うことで利を得ようという生き方が一般的だったからです。
当時は誰もが、「人よりも上に行こう」「人を蹴り落としてでも上を目指そう」
…そう躍起になって戦っていたことでしょう。
そんな時代にあって、老子は、
「人と争わず、常に低いところに留まりなさい。まるで水のように」
…と、生き方の見本として“水”を挙げているわけですね。
ちなみに老子が考える理想の生き方とは、具体的には次のようなことです。
「住まいはしっかりとした土地の上がよく、
物の考え方は奥深いのがよく、
人との交わりでは情の深いのがよく、
言葉は誠実であるのがよい。
政治はよく治まり、
事の処理能力は高いのがよく、
行動は時を誤らないのがよい」
いずれも、現代にも通ずるところがありますよね。
理想論といえば理想論なのですが(苦笑)
「競争しない」という生き方のススメ
「上善如水」や「無為自然」という言葉によく表れていますが、
老子の基本的なスタンスは「競争しない」ということ。
ともすれば私たち現代人は、
「競争から降りて生きる」=負けを認めることと捉えがちですが…。
老子によれば、水のように「争わず、低きところに留まる」生き方こそ
堅く強いものに打ち勝つことができる秘訣なのだとか。
弱さに徹した水の性質を変えさせるものはない、
だからこそ、水に勝るものはないのだと言います。
確かに、水は、その流れの力で少しずつ大きな物(土石)を動かすこともできますし、
山を侵食することも、岩に穴を開けることもできますよね。
流れに触れても、手には何も残らない。
それなのに、何にも勝る力を秘めている。
やわらかでしなやかでありながら、実は何よりも強い!
そんな“水”のような生き方ができれば、向かうところ敵ナシかもしれませんね。
「上善は水のごとし」の意味は?関連ページ
- 『老子』の作者って誰?
- 「道」とはどのようなものか
- 「無為自然」という考え方
- 「和光同塵」の意味
- 自由な発想を大切にした老子
- 老子が勧める「からっぽ」の境地
- 余裕があるくらいがちょうど良い
- 老子に倣って”引き際”を見極めよ!
- 「無」の恩恵に目を向けよう
- 老子が説く!理想のリーダー論
- 老子が「おしゃべり」を禁じたワケ
- 老子の思想は儒家への批判?
- 個性を生かせるリーダーこそ本物!
- 笑われても「道」を貫く老子の覚悟
- 家の中でも真理は悟れる
- 老子も嫌った軽々しい約束
- 「常」を知るべし
- 老子が仁を説いたのはなぜか
- 老子の「道」と「ロゴス」
- 老子が説く「道の法則」とは?
- 「道」と海
- 「罰」についての老子の考え方
- 死刑の是非
- 老子の教えを実行するのは難しい?
- 老子の言う智者と学者の違いって何?
- その成功は誰のおかげ?
- 天は「善人」をえこひいきする?
- 「自分」を大切にしよう
- 良心に従って生きる
- 味気ないものこそ、栄養バツグン!