老子の言葉をわかりやすくお届けします

難解な名作もわかりやすく紹介!『100分de名著』

一度は読んでみたいけど、
読むことを先延ばしにしたり、諦めてしまったり…。
世間で「名著」と呼ばれる書物の多くは、実は、
多くの人にとってはそんな存在なのではないでしょうか。

 

表紙とそのページ数を見ただけで
「あ〜、難しそう!」
「時間がないから、また今度…」
「読みにくそう。自分には無理」
…そんな風に思って、手に取ることを諦めている本、
みなさんにも一冊はあるのではないでしょうか?

 

毎週水曜日 23時〜23時25分の時間帯に
NHKで放映されている『100分de名著』は、まさに、
そんな読書コンプレックスを解消してくれる番組!
「難解」と言われている名著を、
誰にでもわかりやすい言葉と再現映像で解説してくれる番組なのです◎

 

25分×4回=100分という、短過ぎず・長過ぎない時間も、
見ている人を飽きさせない絶妙な時間設定。
さすがはNHK!押さえるべきポイントをしっかり押さえています。

 

過去にはニーチェの『ツァラトゥストラ』、孔子の『論語』、
ドラッカー『マネジメント』、ブッダの『真理のことば』、パスカルの『パンセ』、
サンテグジュペリの『星の王子さま』…等々、
古今東西の名著が取り上げられてきました。

 

そして、2013年の5月に特集されたのが『老子』だったのです。

なぜ、今、『老子』なのか?

5月と言えば、4月から始まった新しい環境の変化に対して
心身が少しずつ疲れや不満を訴え始める時期。
「この選択で良かったんだろうか」と、
自らの進路選択に疑問を感じ始める人もいるでしょう。

 

そんなデリケートな時期に、あえて『老子』を特集するあたり。
NHKの目の付け所はサスガですね(笑)
老子といえば、世間一般の価値観に流されず、惑わされず、
「自然体で生きる」ことの大切さを説いた哲学者。
周囲の環境や評価、そして、その中での“自分”の立場や役割について
悶々と悩んでいる時に読むと力強い勇気をくれる教えです。

 

実際、NHKの公式サイトにも、
「肩の力を抜き、自然体で生きる術を語った中国古典の名著「老子」を取りあげます」
…という記述があり、あえて「5月だから」と老子をぶつけてきたことがうかがえます。

 

競争社会についていけず、劣等感や自己否定感情を持つ人も増えている現代ですが、
実はそれは、老子が生きていたと思われる春秋戦国時代と共通すること。
当時は、鉄の生産が広まったことで生産性が向上し、
商業が著しく発展したことに伴って
生存競争に疲れを感じる人も多かったのではないかと考えられているのです。

 

「老子」は、そんなメラメラした時代にあって、
社会的に“弱者”と呼ばれる層の人たちにとっては
一種の癒やしとなる本だったようです。

 

実はそれは、現代にも共通する部分があります。
時代の流れについていける人もいれば、
必死に食らいついても振り落されてしまう人もいる。
この後者の人々にとって、「無理せず自然体であれ」という『老子』の言葉は
張りつめた緊張感をふっと説いてくれる魔法の言葉であり、
前向きに明日に向かっていくための勇気を与えてくれる言葉でもあるのです。

番組に出ていた蜂屋先生ってどんな人?

NHKの『100分de名著』は、各分野の専門家をゲストに招いて、
その人の詳細な解説と共に進行していくという形式の番組です。

 

この担当する先生もまた、非常に魅力的な先生が勢ぞろい!
「この作者について、ここまでマニアックに研究している人がいるんだ」
という新たな発見もあり、それもまた
番組を見る人にとって一つの楽しみになっています。

 

『老子』の解説を担当していたのは、東京大学名誉教授の蜂屋邦夫先生。
「生前の老子はこんな雰囲気だったのかもしれないな」
と思わせるような、落ち着いた雰囲気のジェントルマン(笑)。
静かに語りかけるような話し口調が印象的な先生でした。

 

蜂屋先生は、1938年生まれの75歳。
東京大学大学院人文科学研究科博士課程を修了され、
その後、東京大学東洋文化研究所教授を経て、
大東文化大学国際関係学部教授に就任。
ご専門は、中国思想史と道教思想史です。

 

代表的な著書としては次のような書籍があります。

 

【著書】
『老子』(岩波文庫)※訳書
『図解雑学 老子』(ナツメ社)
『中国的思考 儒教・仏教・老荘の世界』(講談社学術文庫)
『老荘を読む』(講談社現代新書)
『中国思想とは何だろうか』(河出書房新社)