武力では天下は取れない
老子は、基本的には戦争反対派!
それは、著書の随所からうかがい知ることができます。
老子の考え方のベースにあるのは、
「本当に優れた人は戦いなど好まない」
「優れた人は、“勝利”に固執しない」
「優れた人は、ことさらに“勝利”を鼻に掛けたりしない」
…ということ。
ここでいう「優れた人」というのは、「“道”に従って生きる人」とイコールです。
“道”というのは、老子思想の根幹を為すもので、
「万物の期限」「全ての源となるもの」。
つまり、ちょっと乱暴な表現でまとめてしまえば、
「自然の摂理を知る人は、争いは好まない。
戦って勝利したとしても、そこには意味を見出さない」
といったところでしょうか。
勝利は一時のことに過ぎない
「善者果而已、不敢以取強」
(善者は果すのみ、以て強きを取らず。)
すぐれた人は目的を遂げたらそこでやめる。
勝利を治めたら、それ以上のことはせず、いたずらに強さを誇示したりしない。
…この言葉からもわかるように、老子が考える“勝利”とは、
あくまでも形式的なもの。
もし勝利を得たとしても、それ以上進めてもいけないし、
その勝利を鼻にかけたりしてもいけないし、
なにより、その勝利で傲慢になってはいけない。
…老子によれば、“勝利”とは自ら好んで手にするものではなく、
「やむを得ず、手にしなければいけなかったこと」
「仕方なく、避けられなかったこと」なのです。
見方次第では、ちょっとひねくれた考え方のようにも思われますが…
老子の考え方としては、
「戦いは、本当はしないほうが良い。
しかし、やむを得ず戦わなければならないこともある。
その場合、勝利を手に入れたとしても、その勝利に固執すべきではない」
と解釈できるでしょう。
その背景には、「戦いで勝利を得たとしても、
それはたまたま運が良かっただけかもしれないし、ごく一時のこと。
油断すれば立場はすぐに逆転してしまう。
だから、つけあがってはいけないよ、おごってはいけないよ。
…という戒めがあったものと捉えられます。
勝利への戒め
前述のように、“勝利”というものの受け入れ方や、
勝利した後の心構えについて数多くの教えを残した老子ですが、
極め付けはこちらのメッセージでしょう。
「物壮則老」
(物は壮なれば則ち老ゆ)
勢いが盛んであるほど衰えも早い。
…これは、勝利で調子に乗っている立場にいる時には
ガツンとくる言葉ですね(笑)
運気が上向きで、いわゆる「ツイている時」、
「絶好調!」「ノリに乗っている時」というのは、
とかく「もっと!もっと」と欲が出るものです。
どんどん先へ!前へ!!上へ!!!と突っ走りたくなりますが、
勢いを使い尽くしてしまうと後には“衰え”しか残りません。
だから、勝利して勢いがある時こそ、まずは立ち止まって、
足元や周りの景色を確かめる余裕を持つべきだと老子は言うのです。
過去、日本や世界の歴史を振り返ってみても、
「なぜこの老子の教えを誰も紐解かなかったのだろうか」
と悔やまれる出来事は数多くありますよね。
実は、“禅”にもこれと共通する教えがあり、
「勢い使い尽くすべからず」と言われています。
調子が良い時こそこの警告を思い出し、深呼吸する余裕を持ちたいものですね。
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