「道」についてのとらえ方は?
「老荘思想」という言葉があるように、
老子と荘子の思想はひとまとめにされることが多いようです。
哲学の知識がない方でも、
「老子と荘子は似たようなもの」と捉えている方は多いのでは?
確かに、両者の思想には類似点も多いですし、
二人とも中国の春秋戦国時代を生きた思想家。(…と考えられています)
「荘子の思想は老子の思想を継承して発展させたもの」という説もあります。
しかし、実は、老子と荘子の思想はかなり違っている部分もあるんです。
とりわけ、両者の思想の「根本」とも言える
「道」についての解釈が異なっているのは注目すべき点でしょうね。
老子によれば、「道」とは天地万物の根源。
基本的には、それ自体は変化しない「静的」なものであるというとらえ方です。
一方、荘子のほうは、道=刻々と流転して変化し続ける「動的」なもの。
自らもその変化の波に乗り、楽しむことが強調されているんです。
「静」と「動」。まずはここが、老子と荘子の大きな違いです。
世俗世界との距離感は?
さて、では、老子と荘子はそれぞれ世俗世界については
どのような距離感を持ってつきあっていたのでしょうか。
老子と荘子の思想、どちらも「自然思想」として知られていますよね。
しかし、老子のほうが世俗世界との距離感が近く、
関心が強いという特徴があります。
『老子』には、どうすれば世俗世界で幸せに生きられるのか、
「処世の智恵」「老獪な処世術」を授けてくれる言葉が詰まっています。
これに対して荘子の思想は、世俗世界との間にもっと距離があり
「現世的」なものを超越した思想であると言えます。
ちょっと極端な言い方をすれば、「解脱するための知恵」のようなもの。
世俗世界から脱して、自然世界と合一するための知恵とも言えるでしょう。
専門家の中には、「荘子のほうが宗教的」と表現する方もいるようですね。
両者の違いが分かるオススメ本
老子と荘子、どちらの思想も「道=万物の根源」を中核としたものであり、
自然への回帰を説いたものでしたが…。
荘子のほうが、自然との距離感がより近かったようですね。
人間社会ならではの束縛から解放された絶対的な精神の自由、
自然と一体になった魂の安らぎを理想としていたのです。
こうした「老子」と「荘子」の思想的違いについては、
『荘子(そうじ) 内篇』(荘子著、福永光司・興膳宏訳、ちくま学芸文庫)の巻末、
福永光司氏による解説を読んでみると納得できると思います。
この解説文を読んでわかることは、荘子は、
人間の醜さや愚かさ、卑屈さ、驕慢さを知り抜いている思想家だったのだということ。
人間社会の暗さや歪みを知り尽くしていたからこそ、
そこから自由になって自然に還ることを強調していたのではないでしょうか。
こうして考えてみると、荘子は、
自分も含めた人間の「内面」を深く見つめた思想家だったことがうかがえます。
これに対して老子は、社会全体のこと、特に政治についての言及が多いですね。
このように、「老荘思想」とひとまとめにして考えられることの多い
「老子」と「荘子」の間にも大きな違いがあります。
実際に読み比べてくると、あなたなりの発見があるでしょうから、
ぜひ一度手に取ってみてください!
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